優しい歌が聞こえる。



眠りにつくその瞬間に、君の歌声を聞いた。
誰に聞かせるためでもないだろう、囁くように微かに響く歌声が、繰り返し同じフレーズをなぞっている。

「…続きは?」
「げ。起きてた」
「鋼の、続きは?」

不明瞭な呟きで歌の先を促した私に、君は照れているのかぶっきらぼうに、続きは知らないのだ、とそう言った。

「そうか、残念…」
「うん?」
「いい歌だと思ったんだ」
「――母さんがよく歌ってて」

いつもそこしか歌わないから、歌の続きも知らないし、タイトルだってわからないけど、と君は小さく笑った。

「いい歌だ。とても…」
「…うん」
「優しい、歌…だ…」
「うん。…おやすみ、大佐」

労るように何度も髪を撫でる掌の温もりと、再び耳に届いた君の柔らかい歌声に、誘われるまま眠りの淵へと落ちていく。
あの心地の快い感覚を、今でも身体が覚えている。


窓の外にはしんしんと雪が降り積もり、時折爆ぜる暖炉の薪が、パチリパチリと静かな夜に音を奏でる。
一人きりのこの場所で、眠りに落ちる瞬間に、微かに響く君の歌声を聞いた。

君の掌の温もりを、今も身体が覚えている。
綺麗に微笑む君の笑顔を、今も心が覚えている。
瞼を閉じて耳を澄ませば、今も君の声が聞こえる。

優しい君の歌声を、君のすべてを、ひとつ残らず覚えている。
何ひとつ色褪せず、君のすべてを、今も変わらず愛している。







モドル