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適わない。
「お前は確か巨乳好きだったよな?」 「…なんすか、いきなり」 深刻な顔をしてなにを言い出すかと思ったら、これだ。 こんなときには決まって、ついていく男を間違えたんじゃないのかと自分に問い正したい気持ちになる。 「巨乳好きだったよな?」 「繰り返しますか。…ええ、大好きですよ」 「そうだよな」 満足げに頷いて、俺の背中に凭れかかったまま眠り込んでしまった少年の髪を一房掴んで指に絡めた。 「大佐…。大将、起きちまいますよ」 「大丈夫だ。これくらいじゃ目を覚まさんよ」 男はそう言い、柔和な表情で少年の寝顔を見つめている。 * 「…俺の好みのタイプは、ですね」 「なに?」 「まあ、巨乳なんですけれども」 「…ああ」 なんだ、まだ続いていたのかと言わんばかりの男は、己で話を振っておきながら、然程も興味がなさそうな顔で頷いている。 「できれば、腰はきゅっと締まっていて。尚且つ尻はパイーンと張っていて、っていう…」 「なるほど」 「こう、しっとりとした雰囲気を持つ、酸いも甘いも噛み分けた大人の女、っつーのが好みです」 「そうか」 適当に相槌を打っているものだとばかり思っていた男は、真剣な声色でそうか、と再び呟いた。 「…ですから、まあ。安心してください」 「安心?」 「――違うんですか?」 俺がエドにあらぬちょっかいを出すのではないのかと。 てっきり、それを心配しているものだとばかり思っていた。 「…安心したのはお前だろう?」 「はい?」 「この子にないところばかりを挙げ連ねて、安心したかったのはお前だろう」 返す言葉もない。 すっかり読まれているというわけか。 「…適わねえなあ」 呟いた言葉に返事はなかった。 思わず身体を竦めた拍子に、少年が僅かに小さく身じろぎをした。 「――大佐…?」 「ああ、起こしてしまったか」 「ん…。俺、寝てた?」 背に感じていた熱が急速に冷えていく。 「大佐…」 「ん?」 背中越し、まだ寝ぼけているのだろう、呼ぶ声が甘えを含んで掠れて響く。 俺はそっと立ち上がりその場を後にした。 ―――適わない。 あの男にも、この恋も。 見上げた空には一点の曇りもなく、初夏の陽射しが辺りを明るく照らし出していた。 |