青い魚の見る夢は



真理はどこかと躍起になって探したところで、そう容易く見えてくるものではないし、ないものだと思って探してみれば、やはり何が見つかるわけでもない。
水槽を買った。
水を張って、水草を入れて、空気を循環させるポンプも買った。
ソファに座って眺めてちょうどいい、低めのテーブル、昇進祝いで貰ったよくわからないオブジェの隣。
ポンプのスイッチをカチリと捻れば、途端に水の中を泡が湧き上がる。
「大佐、なにしてんの?」
「ん?」
家に入るなり、脇目もふらずトイレの中に駆け込んだ、少年が訝しげに近づいてくる。
「あれ、水槽?これって前にもあったっけ?」
「いや。三週間前に買ってきたばかりだよ」
「そっか。道理で見慣れないと思った」
水槽の中を、水草がユラユラ踊る。
「…あの、大佐?」
「うん?」
「魚は?俺、見つけられないんだけど…」
「…私もずっと探しているんだけれどね。なかなか見つからないものだな」
「水草の陰とか?」
「どうだろうな?…待っていれば、いつかは実体を伴って目の前に現れると思うか?」
張り付くように水槽を覗き込んでいた少年が、弾かれたように振り向いた。
「…どうした?」
「どうした、って。アンタがどうした?」
「なにが?」
「…これ。この水槽の中。確かに魚はいたんだろうな?」
「いや。…現れるのを待ってるんだ」
ぼんやりと見つめていた少年の顔が、いつの間にか目の前にある。
「大佐…?」
「ん?」
「…ここは海じゃないから、どれだけ待っても魚はこないよ?」
「――そうか」
それが、真理か。
少年の指先が、そっと頬を撫でていく。
「…魚を飼いたかったわけじゃない?」
「どうだろうな?…わからない」
頬を辿る少年の指が、そのまま額にかかる髪をかきあげ、額に唇が降りてくる。
「魚が飼いたいのなら、明日二人で見に行こう?」
「…ああ」
だから、今は休んで。
優しい仕草で抱き込まれ、少年の肩口に顔を埋めて、目を閉じる。
あの水槽に魚を入れて泳がすならば、青と赤の魚がいい。
狭く小さな水の中、巡りめぐって、いつか真理に辿りつくまで。
あやすように髪を撫でる少年の掌の温もりが、意識を眠りの淵へと優しく誘う。
欲しいものが手に入らなくても、必要なものはここにある。

静かに沈む意識の中で、青く優しい夢を見た。










モドル