「時々な?稀に、時折」
男はそう言って、頬を辿り首筋に掌を這わせた。
「このまま首をへし折ってやれたらいいのに、と思うことがあるよ」
「・・・やってみれば?」
「まさか。そんなことをしたら死ぬだろう?」
君か私か。確実にどちらか一方。
男は己の首筋に突きつけられた機械鎧の刃を楽しげに見遣ると、薄く笑いを浮かべている。
「それに、死姦は趣味じゃない」
「俺が死ぬって決めてんじゃねえか」
「君には私は殺せない」
――そうだろう?鋼の。
鈍く光る刃を素手で握り返しながらそう言うと、楽しそうに声を立てて笑った。
「アンタ、たまにえらい自虐的になるよな」
「そうでもないさ」
自らの血が少年の頬を赤く染めていくのを見ながら、男は愉悦の表情を浮かべている。
少年は頬に落ちる血を面倒そうに指先で拭っていた。
「・・・なあ、鋼の」
「あ?」
「どこまで生きていられるかな」
赤い血が流れ落ち、肉が裂かれて、臓器が動きを止めたなら。
男は刃を握る指先に力を込め、嬉々としながら少年に語りかけた。
「なにが言いてえの。俺に殺してほしいわけ?」
「いいや?」
「じゃあ、なに」
少年はいかにも不愉快そうに顔を歪めると、男が握り締めて離そうとしない刃を元の形へと戻していく。
「セックスしよう、鋼の」
「・・・最初からそのつもりじゃなかったのかよ」
「そうなんだがね。いや、そうじゃなくてだな・・・」
「なんなんだ」
「――快楽以上の繋がりが欲しい」
男は一瞬の躊躇の後、そうぽつりと呟いた。
「ああ、そういうこと」
ようやく理解したといわんばかりの少年が、不意にニコリと微笑んだ。
「アンタ、本当に自虐的」
「鋼の・・・」
少年は覆いかぶさる男の髪に指を絡ませて、そのまま優しく引き寄せた。
「なんだよ、愛して欲しいのか」
そうか、それなら。
「俺には無理だな」
笑いながらそう言うと、少年は男の心をいとも容易く切り裂いた。


刺すより簡単。






ロイエド(切り裂く)


モドル