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世界の果てだと言われるその場所は、迫り出した崖の先端にあり、人が立つのも精一杯で、下を覗けば深く底の見えない穴が黒く口を開けていた。 そんな不安定な場所に背中合わせで寄り添いながら、代わる代わるに下を覗き込んでは溜息をついている俺たちのことを他人が見れば、なにを酔狂なときっと呆れるに違いない。 一歩引けば少なくとも今よりは身の安全を保障されるのだろうし、一歩進めば確実に奈落の底へと転がり落ちるだろう。 思うように身動きも取れないその場所に、自ら望んで立っている。 「鋼の」 「あ?」 「あまり下ばかり見ていると、いつか引き摺り込まれるぞ」 「アンタ、人のこと言えねえだろう」 上を見れば空しかないし、前を見れば足場のない空間が広がるだけだし、来た道を引き返すにはあまりに遠く歩きすぎてしまったし。 「いかにも底がなさそうで、確かに魅惑的ではあるがな」 「ほらみろ。アンタのほうがよっぽど危ないじゃねえか」 背中越しにじわりと伝わる熱だけが、不安定なこの場所で、唯一互いの存在を知らしめている。 「まあ、仮に」 「うん?」 「君がうっかり足を滑らせて落ちたとしてもだ」 「あ?」 「ちゃんと拾いにいってあげるから、安心したまえ」 「・・・ああ、そりゃどうも」 底の見えないこの穴の中から、一体どうやって拾い上げるつもりなのかは聞かずに置いた。 聞けばきっと後悔するだろう。 恐らく男は下しか見るもののない、今の状況に酔っている。 「君は?」 「なにが?」 「私が落ちたら、君はどうする」 引き上げようと救いの手を伸ばすだろうか。或いは、男が落ちていくさまを黙って見続けているかもしれない。 「・・・どうだろな」 どんなに考えたところで答えがでるものでもない。 万が一にもそんな状況に陥ることがあったなら、答えはその時でるだろう。 背中越しに男が小さく笑うのを感じた。 ただ確かにわかっているのは、背中合わせで立っているこの男と向かい合わせで立っていたなら、俺は迷うことなく落ちる男の身体を抱いて、ともに落ちたということだけだ。 上を見据える男と、前を見続ける俺と。 二人でともに奈落の底へ落ちていく。 それはとても恐ろしく、あまりに甘美な誘惑だった。 「ばかばかしい」 「まったくだ」 下しか見るもののない今のこの状況に、多分俺も酔っている。 世界の果て
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