「いい…って、感じでもなさそうだぜ?ソレ」
服の上からでもわかる、男の怒張したソレに向って、エドワードは遠慮なく手を伸ばす。
「いいって言ったら、いい。…って、掴むな!擦るな!」
「なんでだよ。実はものすげえ切羽詰ってんだろ?辛いだろうがよ。一発くらい抜いといたって、別に…」
「――勿体ないだろう」
「は?」
「一滴残らず君の中に注ぎ込みたい。君を抱きたいんだ、エドワード」
欲情に濡れてすっかり掠れてしまった声で、恥ずかしげもなく男はそう言い切った。

6年前。
この街で列車を狙った無差別テロが起きた。現場は言葉で言い表し難い、それは酷い有様だった。
たまたまその列車に乗り合わせていた男も例外なく巻き込まれ、身体の半分以上を失った。
男はほとんどのパーツを人工のものとすることを余儀なくされ、そしてその日から、彼は歳をとるのを止めてしまった。
『別に寿命が変わるわけでもないんだが、見た目が変わらないというのも、なかなか魅力的ではあるな』
一度は死を覚悟した男―ロイ・マスタング―は笑いながら、そう言った。
現在のエドワードとロイを見比べてみても、二人の歳の差が14も開いていると一見にして看破できるものもそうそういない。

「あ、相変わらず、恥ずかしい男だなあ!アンタ」
「今更、取り繕ってなんになる」
「そりゃそうかもしれないけどさ…。それ他のヤツに言ったら、確実に引かれるぞ?」
「他はどうでもいい。…私には君だけだ」

頭と片腕、そしていくつかのパーツを残し、他の全ての部位を人工物へと変えざるを得なかったロイは、以前とは違い、薬の力を借りなければ欲情することすらままならない。
催淫剤を服用すれば、僅かな時間なれども人並みに性欲を感じることが可能だが、その薬には強い副作用があった。
吐き気、眩暈、頭痛。
人によって症状は変わるものの、稀に激痛を伴う身体の不調は丸一日かけて身体を蝕み続け、起き上がることさえ困難な状態に陥ることもしばしばだった。
一時の快楽を得るために支払わなければならない、その高すぎる代償。
軍に所属し、休むことなく日々職務を全うするロイにとっては、比喩ならざるまさに命がけの行為といえる。

「なんで、催淫剤なんて飲んだんだよ…」
「言っただろう。君を抱きたかったんだ」
「大佐、俺は…」
「君を抱いて愛したい。…頼むよ、エド」
わかってくれ。
苦しげに呟かれた声が、静かに唸るエンジン音に掻き消されていく。