sweet?



「・・・おはよ。大佐」
「ああ、おはよう」
眠い、腹減った。
起き抜けで寝ぼけた様子のままに、少年がフラフラと冷蔵庫の中をのぞきこんでいる。
「――相変わらず、なんもないね・・・」
「慎ましい生活を心がけているのでね」
「そういうレベルじゃねーよ。これ」
ミネラルウォーターと麺つゆって、アンタ一体どういう食生活送ってんの?
ぱたりと冷蔵庫の扉を閉めて、少年がこちらに向かってとぼとぼと歩いてくる。
「ああ、そういえば」
「ん?」
「シュークリームがあったはずだ。確か」
「シュークリーム?」
「そう。昨日もらってどこかに置いた・・・ような気がする」
「冷蔵庫以外のどこにしまったんだよ。アンタ・・・」
キッチンじゃねえの?やり部屋?まさか、トイレとかいうなよ?いっそ笑うぞ?
部屋という部屋の扉を開け放ちながら、シュークリームシュークリーム・・・と呪文のように呟きながら、シュークリームを探しまわっている。
余程も腹が減っているのだろう。
なんだか不憫に思えてきて、一緒に探そうかと立ち上がる。
「あ。思い出した」
「なに?どこ?」
「・・・本棚」
「はぁ!?」

***

信じらんねえ。つーか、ありえねえ。
そう言いながら、少年は本棚に見事に収納されていたシュークリームの包みを開けている。
「・・・なあ。これ食えんだろうな?」
「まあ、大丈夫だろう。昨日の今日だしまだいける」
本当かよ・・・。
疑わしげな顔をしながらも、手が目が口が、既に食べる気満々だ。
「つーか、朝からシュークリームって、どうよ?」
「別に無理して食べなくてもいいんだぞ?」
「いや、食べる。食べます。わあ、おいしそう」
「・・・そうか?」
「――俺の気分を盛り下げんな」
パクリとシュークリームを頬張って、少年が満足そうに小さく笑う。
「うま」
「それはよかった」
「大佐も食べる?」
「いや。私はいいよ」
「そう?」
「ああ。鋼の」
「ん?」
「口の端にクリームがついているぞ」
クリームを拭おうと少年の赤い舌先がチラリと覗いた瞬間に、その舌先ごとクリームを絡め取る。
「・・・朝っぱらから、なにしてくれてんだ」
「朝からシュークリームを食べている君に、言われたくはないね」
「他に食うもんねえんだから、しょうがないだろ」
「でも、悪くはないな」
「なにが」
「そのシュークリーム。甘いがそれほど重たくはない。・・・鋼の」
「あ?」
「君の味がする」
「――アホか!」
瞬間、顔を真っ赤に染めた。
「甘くて柔らかな金のクリーム、が。まるで君のようだねえ」
「黙れ!恥かしい男だな・・・」
「どうして?誉めているのに」
「嬉しくない。ついでに言うなら、俺じゃない」
「うん?」
「俺はこんなに甘くない。それにもっと・・・」
俺はもっと、ドロドロしてる。
少年はそう言いながら、手にしていたシュークリームを平らげて、赤い舌先をチラリと覗かせ薄く笑うと、淫らな仕草で誘ってみせた。