よろしく哀愁
「あのね、大佐におみやげがあるんだ」
「え?私に?」
「うん・・・。気に入ってくれるといいんだけど」
「何言ってる。君のその気持ちだけで嬉しいよ」
「…本当?」
「勿論だとも」
「よかった。あのね、これ」
「…なにかな?マフラー…いや、ショールかな…?」
「ううん。絶好調で頭に巻いてるとこ悪いんだけど、それ下着なんだ」
「…下着?」
「そう。それはね。・・・ええと、東の海に浮かぶ小さな島国で愛用されている殿方専用の下着なのですー」
「はあ…」
「一度使えばその締め心地たるや男に生まれて、ああよかったと必ずや思える極上の一品なのですー」
「あ、ああ。そう」
「清潔感があり通気性にも優れ、いざというときには手拭いや止血帯としても利用でき、まさに軍の衣と呼ばれるべき品物なのですー」
「いや・・・。鋼の?」
「フンドシ締めずに何が軍人!何が男ぞ!」
「わ、びっくりした」
「…というわけで、大佐に買ってきました。フンドシです」
「あ、ありがとう…」
「親方に締め方もちゃんと教わってきたからさ。後で俺がやってあげる」
「…ああ、うん。…よろしく頼むよ」
*
「・・・できたー!」
「これでいいのか?なんか、こう・・・」
「ねえ、男に生まれてきてよかった感じ?」
「あ、いや…。まあ、そうだな…」
「そっか。よかったー」
「あー、うん。よかった…」
「俺がいるときは、毎回ちゃんと俺が締めてあげるからね」
「・・・鋼の」
「うん?」
「もしかして、君はこういうのが好きなわけか?」
「は?」
「いや、こういういかにもといった風情の・・・」
「いかにもって?」
「正面からみて、もっ!とした感じの、男だぜ!といった風な・・・」
「・・・何いってんの」
「あ、いや・・・」
「それじゃまるで俺が変態みたいじゃん。根っからの男好きみたいじゃん。男根愛好家みたいじゃん・・・」
「――いや。流石にそこまでは」
「大佐、酷いよ…」
「鋼の?」
「俺は、ただ…大佐が…」
「…すまない。私が悪かった」
「――大佐が!いつも、ハミチンしてるから!」
「…は?」
「トランクス履いてる時に、いっつもいっつも横ハミしてっから!」
「横…」
「だから大佐のためを思って買ってきたのに、なんだよ!?その言い草は!」
「・・・」
「そうやって一生はみだしてればいいんだ!大佐のバァカ!!」
「――え?えっ?一生って…、鋼の!?」
*
たそがれて、褌姿の男が一人。
男が背で語るは愛か、生き様か。
男盛り、夏盛り。
ロイ・マスタング29歳の夏はこうして過ぎていく――。