地上の星
見晴らしのいい丘を見つけたんだ。
そこからだと、セントラルの街が一望できるんだよ。
大佐、知ってる?
行くんなら、夜がお勧め。
夜景がね。とっても綺麗だよ。
それはまるで、地上の星。
満天の星。
天上にも、地上にも。
丘から見える、その一つ一つはどれも同じに見えるけど、でも本当は一つ一つ全部違って。
ビルの明かり、家の明かり。或いは街灯。
そん時、俺さ。
その下に、どれだけの人がいるんだろうって考えた。
この街にはどれだけ沢山の人がいて、どれだけ沢山の人生があるんだろうって。
その一人一人のさ、大事なもの、守りたいもの。
かけがえのない人、大切な人。
この街はさ、そういう色んなものを抱えて存在してるんだろうなーって、そう思って。
そしたら、自分がどれだけちっぽけな存在なのかと、改めて自覚した。
俺は、自分のことだけで精一杯で。
胸の中にね。
大事なもの、守りたいもの、かけがえのない人、大切な人。
ここに確かに存在しているはずなのに、でも俺は――。
そう、思ったら。
なあ、大佐。寝言だと思って聞いて欲しい。
俺、これからとんでもない弱音吐くから。
でも、もう二度と言わないから。
もっと強くなりたい。
俺は、弱いから。
これ以上、アルを巻き込みたくない。
でも一人で歩くのが怖い。
迷いたくない。前だけを見て進みたい。
だって、振り返るのが怖いんだ。
一歩も前に進めなくなる。
怖いんだ。怖いんだよ、俺。
自分がどれほど弱くて臆病かって、それ考えたら泣いちゃうそうだよ。
やらなきゃいけないことは、わかっているのに。
どうしたらいいのか、わからないことだらけでさ。
大佐?
なんだよ?慰めていらねえぞ?
だって今の全部、寝言なんだから。
もう二度と、言わないんだから。
いきなり大佐に抱き締められた。
大佐は何も言わず、ただ静かに俺を抱き締めた。
「大佐…?」
「…寝言だと思って聞いてくれれば、いい」
「え?」
「君が見た明かりの中に、多分、私もいただろう」
「ああ、うん」
「大事なもの、守りたいもの、かけがえのない人、大切な人」
「…うん」
「それは私の中にも存在している」
「うん・・・」
鋼の掌をそっと掴まれ、そのまま大佐の胸に導かれた。
「ここに、な?…君がいる」
「あ…」
「君がいる。いつも想っている。もしも君が迷っても…」
「・・・」
「きっと導いてやれるだけの、明かりがここに灯っているから」
「・・・うん」
「君は、迷ってもいいんだ」
「うん。うん…」
そして、もう二度といわないからなと、そう言って。
強く強く抱き締められた。
心の中に、明かりが灯る。
あの丘から見れば、それは小さく灯る明かりだろう。
それでも一つ一つは限りなく、精一杯に光り輝く、地上の星には違いない。