星に願いをかけるなら。



「だー!あっちー!」
「…今日から本格的な夏日が続くそうだからな。諦めろ」
「まあ、それは仕方ないとしてもさ。なんでそういう時に限ってエアコン壊れてるんだとかいうわけ?」
「別に私のせいではないよ」
「そうかもしんないけどさ。だったらさ、呼ぶなよ?!」
「一人で暑いのも、なんだか癪でな・・・」
「遠い目しながらガキみたいなこと言ってんじゃねえ!」
「また、水風呂入るか?」
「入らねえよ!ただ入るだけじゃねえんだもん、アンタ一緒だと」

ずぞっと麺をすすり込みながら、エドが怒鳴る。
ロイの自宅に『至急』扱いで呼び出されたエドワードは、ロイと二人、今は冷やし中華を食べていた。

「やっぱり、こう暑いとな」
「あ?」
「醤油ダレの方がよかったな。ゴマダレよりも…」
「俺の反対を押し切ってまで、ゴマダレがいいと店でだだをこねたのは大佐、アンタじゃなかったか?」
「そうだったかな・・・」
「とぼけんな。・・・つかさ」
「なんだ?」
「卵、あるっていったじゃん・・・」
「あー…。この前見たときはあったような気が」
「なかったじゃん。…卵がのってない冷やし中華なんて」
「旨いよな」
「チョビ髭生やしたサンタクロースくらいにマヌケだ…!」
「…これはまた随分と飛躍したな。暑さにやられたか?」
「卵…ッ!」
「そうだ、鋼の」
「なんだよ?」
「サンタクロースといえばな。今日は七夕らしいぞ」
「は?また随分と話が飛んだな」
「君ほどではないよ。・・・いやね?クリスマスにはモミの木を売りにくるのに、どうして七夕には笹を売りにこないのだろうかな、と思ってね」
「そこらへんに生えてるから?」
「みたことあるか?セントラルで」
「ないな」
「だろう?と言うわけで、あとで笹を探しに行こうか」
「はあ?!なんで?面倒くっせー!しかもこの暑いのに?いやすぎー」
「たまにはいいだろう。普段は会えない恋人同志がだな、年に一度だけ会うことを許された日だぞ?ああ、まるで私たちのことのようだね。鋼の」
「なっに、夢見てんだ?寒いこと言ってんなよ」
「んー、まあ涼しくなったところで、ちょうどよかったじゃないか」
「…本気?」
「本気」
「まじっすか。…あのさ?」
「なに?」
「あれって願い事を書いた短冊を笹に吊るすんだっけ?」
「そうだね。それを川に流したり、燃やしたりして願いを天に届けるんだ」
「大佐ってさ。短冊に書くような、願い事あるんだ?」
「あるさ」
「へぇ」
「君は?」
「あるね」
「だろう?」
「うん」

「…ゴマダレが醤油ダレになりますように」
「…冷やし中華に卵がのりますように」

二人同時に呟いて、思わず顔を見合わせた。
そして、心底イヤそうに見つめあう。

『…ま、そんなもんだよな?』

この胸の中、確かに思う願いはある。
それは自ら手に入れるもの。
今宵の星に願うには、あまりに切実な願いだから。
見つめあった瞳のままで、二人はそっと微笑んだ。