she,see,sea



窓から空を眺めながら、どこまでも続く青い帯を見ていたら、不意に海というのを見たくなった。
海が見てみたいわ。と言ったら、いつか3人で見に行こうねって、アルはそう答えてくれた。
エドは黙って本を読んでいる。
海に行ってみたいのよ。ってもう1度言ったら、そうだね、いつかきっと。ってアルはそう答えてくれたけど、エドは静かにコーヒーを口に運ぶだけ。
「…海に行きたいの」
「こんな感じだぜ?」
私を見ようともしないエドに拗ねた口調で再び言い募ったら、エドはやっぱり私の方を振り向きもしないで、ぶっきらぼうにマグカップを指差した。
「…何が?」
「海」
コーヒーを覗き込みながら、エドが言う。
「海って、青いんじゃないの?」
「さあ?俺は黒い海しか覚えてないけど」
エドは小さく笑って、マグカップを少しだけ傾けた。
中に注がれたコーヒーが、たぷんと揺れて小さな波を作り出している。
「これが、海?」
「そうだよ。だからね?」
この海をあげる。とそう言って、エドは私に振り向くと手に持ったマグカップを差し出した。
そうして、再び本へと視線を落す。
「・・・ずるいのね」
ほんの少しだけエドを振り向かせた喜びと、どうにもならない寂しさを持て余しながら、私は黒い海を飲み干した。