夕暮れ時、夕焼けの空。



僕の兄さんは、僕が生まれたときからずっと僕の兄さんで、
僕が物心ついた時には、もうすっかり兄さんだったので、
子供のときからいつだって、兄さんは僕の絶対だった。

頭が良くて、美人で(だと周りはいう。僕は正直わからない)、明るくて、兄さんはいつも僕の憧れだった。
周りの皆は、僕を見るといつも決まってこう言った。
「アルフォンス君はいいね、毎日エドワード君と一緒にいられて」
いいでしょ、毎日ずっと兄さんといられて。
「エドが兄貴なんてうらやましいよ。きっと毎日楽しいだろ?」
羨ましいでしょ?兄さんと過ごす毎日は楽しいよ。
兄さんは大人で、強くて、優しくて。でも、ほんのちょっぴりイジワルで。
そんな兄さんは、いつでも僕の味方だった。


夕暮れの窓辺に一人佇み、外を見下ろす兄さんが、夕焼けの色に染っている。
気がついたことがある。
兄さんは、泣きたいときに、笑うんだ。
どうにもならない不安を一人で抱えて、決して誰にも見せようとはしない兄さんは。
今もまた、全身を真っ赤に染めて微笑んでいる。
兄さん、僕にも話してくれないの?
僕では力になれないの?
子供の頃から、憧れだった。兄さんはいつだって僕の味方だった。
―本当は、本当は僕が兄さんを守りたい。あの頃から今でもずっと。
兄さん、僕は兄さんの味方じゃないの?
喉まで出かかった言葉を飲み込んで、僕は兄さんに1歩近づく。

「兄さん・・・」
「・・・空、綺麗だな」
「うん。兄さん、真っ赤だね?空と一緒だ」
「アルもほら。・・・俺と同じ、真っ赤に染まってる」

そう言って、綺麗に笑った兄さんを、
今はまだ、見つめることしかできなくて。