セパレート・ブルー



海を見た。
晴れ渡る空と、見えない風に導かれて、一人来た。
最後に海を見たのはいつのことだったか、今ではもう思い出すことすら難しい。

いつか貴方が教えてくれた、空と海の物語。
結末を急かした俺に、続きは今度。と笑って言った、貴方はここにはいないから、俺はその物語の結末を、未だに知ることはない。
あの時貴方と見た空は、蒼く蒼く果てしなく続き、海の碧は空を追いかけ、どこまでも遠く。
それはまるで『永遠』だった。

この空は、あの時見た空と同じだろうか。
この海は、あの時見た海と同じだろうか。
あの時貴方と見た空は、こんなにも高く、決して手が届かないほどの。
あの時貴方と見た海は、こんなにも深く、色を変えてどこまでも深く。
こんなにも。こんなにも――――。
貴方がいない景色は、こんなにも色褪せて。
空の蒼さも海の碧も、全ては記憶の中で色鮮やかに蘇る。

「――なあ、大佐」
話の続きを聞かせて欲しい。
貴方がいつか話してくれた、空と海の物語。
その結末を教えて欲しい。
「ね、大佐…。ああ、今はもう、大佐じゃなかったんだっけね…?」
南の戦地で、貴方は二階級特進の栄誉を受けた。
そしてそれからずっと、貴方の声を聞いていない。
「ねえ、続きを…」
貴方の声で、話の続きを。
貴方の声で、もう一度。

あれはまるで『永遠』だった。
『永遠』なのだと信じていた。
それが幻だったと気づいても。

どうかどうか、もう一度。
貴方の声で、もう一度。