A Taste Of Honey



逃げることを考える。
追いかけられることを考える。

逃げる自分。
追いかけてはこない男。
あまりに容易く想像できた。
なんだかおかしくて、笑った。

機械鎧のことを考える。
攣れた傷痕を丹念に舐めあがる舌の感触を思い出す。
身体がぞくりと粟立った。
あの男の熱を思い起こして、足のつま先がピクリと動いた。

逃げることを考えながら、追い込まれる自分を思う。
あの男が辿った後を、指ですべらせ慰める。
熱に浮かされる。
あの男を思うだけで精一杯の自分がいる。

逃げることを考えながら、追いかけられる快感を思った。
振り向きながら逃げる自分と、
視線ひとつさえ追いかけることはしないだろう男を思って、
なんだかおかしくて、笑った。