風の吹く丘。
大きなバスケットに花を沢山詰めこんで、丘を目指す。
丘にむかう一本道で、時折出会う人たちと挨拶を交わしながら、晴れ渡った空の下、急く気持ちと競うように丘を目指す。
丘の上には、大好きなあの人の、大切な人が眠っている。
バスケットに詰め込んだ花は、白いカーネーション。
*
今日はあなたに贈り物を届けにここにきました。
それと、ほんの少しのお願いと。
どうかあなたに届きますように。
さっき、私の大切な人が眠る場所にも、白いカーネーションを置いてきました。
赤いカーネーションを渡すことができなくなってから、もう随分たちますが、白いカーネーションも、そう捨てたものでもないと、今ではそう思っています。
それは決して強がりなどではなく―。
白いカーネーションの花言葉は「私の愛は生きている」だそうです。
どんなに遠く、今はもう手の届かない場所にあっても、いつまでも。
私たちがあなたをどんなに恋しく思っているか、どんなにあなたを愛しているか、この気持ちだけでもあなたの元に届けばいいと、思いの数には満たないけれど、このカーネーションを贈ります。
そして、ひとつお願いを。
あなたが今いるその場所からは、私の大好きなあの人を見つけることはできますか?
私が今立つこの丘からは、遠い街にいるあの人を、見つけることができません。
ですから、私の代わりにあの人を、今はここにいないあの人を、どうかずっと見守っていてくれますように。
そして、いつかあの人が、思う未来を手に入れた時、私がここにいることを、あなたと二人いつまでもここで思っていることを、どうかあの人に伝えてください。
*
風が吹く。
小さく渦を巻いた風に煽られ、花が舞う。
優しく儚く舞う花は、季節はずれに舞い落ちる、それはまるで雪のように。