眼鏡。
「あっれ?大佐って眼鏡かけてたっけ?」
「んー?いや、普段はかけないが」
「ふーん」
軽く視線をあげてそう答えた男の顔が、知らない男の顔に見える。
多分それは、見なれない眼鏡のせいだとわかってはいるのだが、どうにもこうにも落ちつかない。
「…なに?」
「え?」
「なんだか、ソワソワしているようだが。なにかあるのか?」
「…なんも、ない。つか、それ。何読んでんの?」
「ん?まあ、辞書みたいなものだ」
「ふーん…」
普段見なれた童顔が、なんだかちょこっと男前に見えるのは、それ絶対眼鏡のせいだろ。と、わかってはいるのだが。
やっぱりどうにも気になって、本を覗き込むフリをしながら大佐の様子を伺った。
「ああ、そうか。なるほど」
「なに?」
「確かに私はいい男だが?あまりに見惚れられると流石に照れるものだな」
「ばっ・・・!かじゃねえの?!見てねえよ!」
「誰も君のことだとは言ってはいないが。顔が真っ赤だな。どうした?鋼の」
…うっわ、ムカツク。
なんだかすっかり見透かされて、とてもとてもいやーんな気持ちだ。
得意げかつ満足そうに笑う目の前の男を、地の果てまでぶっ飛ばしてしまいたい。
「…眼鏡が!」
「ん?眼鏡が?どうした?」
「眼鏡が気になって見てただけ!」
「ほう、それはそれは。似合い過ぎて怖いくらいだろう?」
「つか、かわいそう!!」
「…あ?」
「大佐、かわいそう!老眼、かわいそう!!」
「は?老眼…!?」
バーカバーカ。
そう言って部屋を飛び出した。
本当はちょっと惚れ直してしまいました。
…なんて事は、絶対絶対言ってやらない。