降り注ぐ雨、或いは弾丸。



辺り一面、火の海だった。
重厚で威厳溢れるあの建物も、今では見る影もなく、ただの瓦礫の山と化している。
中央が炎に包まれる。栄華を誇るこの街が、終焉の時を迎えていた。
人は常に戦いの場に身を晒している。例えば自己との戦い。それらは生きていくのであれば、誰もが避けては通れないものだ。
しかし、これは。
刃向かうもの全てのものから、容赦なく奪い、切り捨てる。
人を人を思わずに、直に己も人でなくなる。
目の前にあるのは、修羅の道。
既にひき返すことは適わない。
始めからわかっていたことだ。軍の狗になるとはそういうことだと。
たとえそれが、どんなに理不尽な戦いであろうとも、己に刃を向けてくるものあれば、ただ葬り去る。それだけのことだ。
不意に右肩に痛みを覚えた。長く続いた戦いで、酷使しすぎたのかもしれないと、軽く押さえて気がついた。
雨が降っている。
そうか。そのせいで肩が痛むのか。いつから降っていたものか、雨の気配に気づけなかった。
炎に包まれた街を静める銀の糸。
星のように降り注ぐ鉄の弾丸。
このままここで死ぬのだろうか。夢も希望も終いえたまま、この鋼の身体そのままに。
沈み込んだ目線の先に、花を見つけた。
瓦礫の街に、花が咲いている。
身を潜めて初めて気づく、その白い可憐な花に不意に涙が零れそうになる。
――生きろ。
そう一言、貴方が言った。
燃え盛る炎の中でも鮮やかに、その掌で焔を熾して。
――生きろ。迷うな。なにがあっても、お前は生き抜け。
そう言って炎に消えた、あの人の姿を俺はあれから見ていない。
瓦礫の隙間に身を隠して、弾丸が降り止む合間を待つ。
せめて、あの炎の向こう側に。
感覚を失った左足は、恐らく使い物にはならないだろう。
這ってでも、辿りついてみせる。諦めない。
生きて生きて、生き抜いてやる。
決して何も失わず、なにも奪われてなるものか。
あの炎の向こう側。
貴方を探して、ともに生き抜く。

再び色を取り戻した少年の瞳に、映し出される白い花。
花の上に降り注ぐのは恵みの雨。あるいは弾丸。