ネコの気持ち。



「…だから、人間も植物と同じでさー」
「うん」
「つまり、何種類もあるうえに、一見して中身はわからないってこと」
「ううーん。どういうこと?」
「そうだな、例えばさ。すごい綺麗な花が咲くんだけど、実は猛毒を持っていたりとか…。見るからに怪しい実なんだけど、食べたらすんげえ旨いうえに栄養満点!とかさ。」
「ああー、なるほどー」
「そ。でも、中にはみるからに胡散臭そうな、根性悪そうな、イヤミを連発しそうな・・・まあ、そういう植物もあるよな」
「・・・植物?イヤミを言う植物なんてあるの?」
「そこでだ、アル」
「うん?」
「お前なら、どうする?その如何にも怪しげな植物に、わざわざ近づいたりするか?もしかしたら、吸いつかれるかもしれない危険を冒してまで!」
「・・・吸いつかれるんだ?」
「ありとあらゆる手段で猛毒を打ち込んでくる、そんな危険極まりないもんに会いたいか?!」
「テクニシャンなんだね。っていうか、猛毒ってこの場合どれを指すんだろ」
「というわけで!これにてごめん」
「ちょっと待った!・・・なんでここまできて帰ろうとするの?入口まで来て逃げないでよ、兄さん」
「やだ、いーやーだー!そんなに大佐に会いたきゃ、お前が行けよ。アル」
「まぁた、そんな我侭言って。僕が言っても仕方がないでしょ?」
「うーうー。ヤダ。今度は一体どんなイヤミ言われるかと思ったら・・・」
「―期待に胸が膨らんで、とても平常心ではいられないと?」
『・・・大佐!!?』
「久しぶりだな。鋼の。それにアルフォンス君も」
「お久しぶりです。大佐」
「・・・お久しぶりでっす・・・」
「さ、とりあえず話は中で聞こうか?良い報告を期待しているのだがね」
「・・・ううう」

ぎゃーぎゃー喚いていた兄さんが、大佐を見るなり途端に大人しくなった。
まるで、鈴をつけられたネコのようだ。
兄さんが小さく悪態をつくたびに、大佐は涼しい顔で受け流している。
廊下の向こう側から歩いてきた人に一々ぶつかりそうになる兄さんを、大佐が兄さんの腕を引きながら避けている。
その度、顔を赤らめる兄さんは、まるで酔っ払っているかのようだ。

ああー、なるほど。
植物に含まれる成分が、人体に影響を及ぼさなくても、他の動物に作用を引き起こすこともある。
「にーさん。わかった!」
「・・・へ?」
「大佐は、またたびなんだねー」
『・・・は?』
振り向いた大佐と、兄さんの声が綺麗にハモる。

ネコにまたたび。
兄さんにとって、大佐は多分きっと、そんな感じ。