セイロンティーにしてください。



せっかく急いでアンタのところに、帰ってきたっていうのにさ。

「さあ、どれにしようかな?」

もう無理ってくらいに長くアンタと離れてて、やっと会えたと思ったのにさ。

「君はどれが好みだ?キーマン?アッサム?ダージリン?」

最近、紅茶に懲り出したとか、そんなことを言いながら、
アンタは葉っぱが入った、茶色い缶を選別してる。

「・・・なんでもいいよ。俺、そういうのよくわからない」

ストレートがいい?ミルクはいれる?ああ、ミルクはいらないか。
アンタときたら、一人でとっても楽しそう。

「…鋼の?」
「なに」
「なんだか、機嫌が悪くはないか?」

機嫌なんか悪くない。
だってずっと会いたかった。アンタに会えたし、文句ない。
でも、ちょっと。
紅茶にばっかり気をとられて、俺の方も見向きもしない、
だから葉っぱに妬いていました。拗ねてみました。
…だ、なんて。
言えるわけない、言う気もない。

紅茶は嫌いだったかな。
アンタときたら、見当違いの困惑抱えて、缶を片手に突っ立っている。

「紅茶の名前はわからない。…けど」
「ん?」
「とっとと開く、葉っぱがいい」
「…蒸らす時間が短い紅茶か?」
「うん」
「そうか、それならセイロン…」

にっこり笑ってそう言いかけた、アンタの唇に噛み付いた。

だって、キスもしてないじゃん?
やっと会えたと思ったのにさ。

「…お茶は後にしようかな?」
「うん。そうして」

蒸らす時間も、焦らす時間も。
どうぞ短めでお願いします。

お湯が沸いたとピーピー知らせる、やかんの乗った火を止めて、
片手に持った紅茶の缶を、台の上にコトリと置いた。
空いた両手で俺を抱きしめ、再びゆっくり重なる唇。

紅茶を蒸らす時間より、俺を焦らした時間より。
キスをする時間はもっと、長め長めでお願いします。